結論、たまねぎは犬に与えてはいけない食材です。有機チオ硫酸化物(チオスルフィン酸化合物)という犬にとって有害な成分が含まれています。犬がたまねぎを食べると、この成分が原因で貧血や急性腎不全を発症し、致死量は犬の体重1 Kg当たり約20g以上と考えられています。本記事では、与えてはいけない理由や食べてしまったときの対処法を解説します。
犬にたまねぎは与えてはいけない!
たまねぎには、犬にとって有機チオ硫酸化物(チオスルフィン酸化合物)という成分が含まれており、たまねぎ中毒を引き起こします。加熱などの加工調理を行っても、この成分は消失しません。
たまねぎを摂取すると、赤血球や赤血球中のヘモグロビンを酸化がさせられ、破壊(溶血)されてしまいます。症状としては、下痢、嘔吐、血尿、発熱、呼吸困難などが代表的です。犬がたまねぎを摂取してから、早ければ1~2時間で初期症状が現れ、本格的な症状は消化後の1~2日に症状が現れるとされています。
たまねぎ以外にも、ネギ類である、にら、長ねぎ、わけぎ、にんにくでも同様の症状が現れます。
これらのことを踏まえる、愛犬にたまねぎを与えないようにしましょう。
犬にたまねぎは与えてはいけない理由とは
愛犬にたまねぎを食べさせてはいけない理由について、解説します。
玉ねぎに含まれる有機チオ硫酸化物(チオスルフィン酸化合物)による中毒
たまねぎには、有機チオ硫酸化物(チオスルフィン酸化合物)と呼ばれる成分が含まれています。人間にとっては無害ですが、犬にとっては有害な成分です。
摂取すると、身体中に酸素を運ぶ赤血球中のヘモグロビンを、酸素を運べないメトヘモグロビンへ返させてしまいます。メトヘモグロビンが増加すると、赤血球の内部の膜に集まり、塊となります。そうすると、赤血球は破壊され溶血し、重度の貧血が引き起こされ、最悪の場合は死に至ります。
加熱調理後も有毒成分は消えない
たまねぎに含まれている有機チオ硫酸化合物(チオスルフィン酸化合物)は、加熱調理などを行っても、消えることはありません。そのため、たまねぎが入っている料理はいずれにも有機チオ硫酸化合物(チオスルフィン酸化合物)が含まれています。
たまねぎが入っている料理や食材は、たとえ少量であっても与えるのはやめましょう。
たまねぎに含まれる硫化アリル(アリシン)による貧血や胃の不調
たまねぎを切ったりすり潰したりすると、辛味成分である硫化アリルが空気中に触れ、アリシンという物資に変化します。アリシンは、体内で分解されると、二流化アリルを生成しますが、犬は二流化アリルを消化する酵素を持っていません。そのため、二流化アリルによって赤血球が破壊され、貧血を引き起こすことがあります。また、強い殺菌作用も有しており、胃を傷つけたり腸内細菌にダメージを与えたりする危険性もあります。
たまねぎの部位・状態ごとの危険性
たまねぎの部位・状態ごとの危険性について、解説します。
生のたまねぎ
前述にあるように、有機チオ硫酸化物(チオスルフィン酸化合物)や硫化アリルなどが含まれており、中毒症状の原因になるため、愛犬に与えてはいけません。
加熱調理後のたまねぎ
前述したとおり、有機チオ硫酸化物(チオスルフィン酸化合物)は、加熱しても消失しません。炒めたり、茹でたりするなど加熱調理した場合でも、有毒成分は消えないので、愛犬に与えないようにしてください。
たまねぎの匂い
たまねぎを切ったりすり潰したりすると、syn―プロパン血アールーS―オキシドという成分が出ます。犬は、この匂いを嗅ぐ、不調になることもあります。当然、人間が調理した時に空気中や人の手に放出されるので、犬を飼っている場合には調理中や調理後に注意が必要です。調理中はキッチンに近寄らせない、たまねぎを調理した後はよく手を洗ってから愛犬に触れるなど、気をつけましょう。
犬にとってのたまねぎの危険な量
犬の体重1Kg当たり約20g以上のたまねぎが致死量と考えられています。犬種や体重など個体差があるため、上記は目安になりますが、いずれにしてもたまねぎを犬に与えないようにしましょう。
犬がたまねぎを食べてしまった場合に現れる症状
犬がたまねぎを食べてしまった場合に現れる症状について、解説します。
初期症状
初期症状は、早ければ1~2時間ほどで発症するとされており、症状としては以下のものが挙げられます。
- 嘔吐
- 下痢
- 腹痛
- 食欲不振
消化後(溶血)の症状
消化後(溶血)の症状は、早ければ1~数日ほどで発症するとされており、症状としては以下のものが挙げられます。
- 粘膜蒼白
- 血色素尿
- 黄疸
- 頻脈
- 呼吸切迫
- 呼吸困難
- 衰弱
- 血便
- 吐血
犬がたまねぎを食べてしまった場合の対処法
飼い主さんが対応すること
たまねぎを食べてしまった場合は、まず、かかりつけの獣医さんに相談しましょう。間違っても、飼い主自らが無理矢理吐き出させるようなことはしてはいけません。獣医さんでも慎重に行う処置なので、飼い主さんが行うのはやめておきましょう。
診てもらう際には、いつ、どのくらい食べたか、水を飲んだか、どんな症状が見られたかなどをメモして獣医さんに伝えましょう。そうすることで、現状把握がしやすく、スムーズに診察・治療が進められます。
病院での治療法
対症療法として、ビタミン剤、強心剤、利尿剤などを投与し、催吐や胃洗浄などが行われます。摂取したのが60分以内で、臨床症状が出ていない場合は催吐し、摂取したのが2〜4時間以内であれば胃洗浄を行ったり、塩類下剤の投与をしたりすることもあります。貧血が起きている場合は輸血をすることもあります。
参照:大島誠之助、左向敏紀(2011). 禁忌食(その1)――タマネギなどのネギ属とイヌ・ネコの健康 ペット栄養学会誌, 14(2), 103-104
犬がたまねぎを誤って食べてしまうのを防ぐには?
まず第一に、愛犬が口にできたり、たまねぎの存在を確認できたりするような場所に保管するのはやめましょう。また、人が食べた後の残しや、処理した種や皮に愛犬が近寄れないようにする必要があります。
まとめ
たまねぎは、犬にとって有機チオ硫酸化合物(チオスルフィン酸化合物)という有毒な成分が含まれているため、与えてはいけません。また、長ねぎ、あさつき、わけぎ、ニラ、ニンニクなどのネギ類も同様の症状を引き起こします。人のごはんをつくる調理時や調理後、保管場所には注意しましょう。