結論、ネギは犬に与えてはいけない食材です。有機チオ硫酸化物(チオスルフィン酸化合物)という犬にとって有害な成分が含まれています。犬がネギを食べると、この成分が原因で貧血や急性腎不全を発症し、致死量は犬の体重1 Kg当たり約5g~10gと考えられています。本記事では、与えてはいけない理由や食べてしまったときの対処法を解説します。
犬にネギは与えてはいけない!
ネギは犬に与えないようにしましょう。ネギは、にんにくやたまねぎと同じアリウム科に属する植物で、これらの植物に共通して含まれる有機チオ硫酸化物(チオスルフィン酸化合物)が犬にとって有害であることが知られています。加熱などの加工調理を行っても、この成分は消失しません。犬がネギを摂取すると、その成分が赤血球を破壊し、結果的に溶血性貧血を引き起こす可能性があります。
ネギに含まれる有機チオ硫酸化物(チオスルフィン酸化合物)は、犬の体内で代謝される際に赤血球に損傷を与えてしまします。犬がネギを少量摂取しただけでも、嘔吐、下痢、食欲不振、腹痛といった消化器系の症状を引き起こすことがあります。また、沢山摂取してしまうと、呼吸困難、赤血球の大量破壊による深刻な貧血、黄疸などさらに重篤な症状が現れることがあります。
犬にネギを誤って与えてしまった場合や、ネギを含む食べ物を食べた疑いがある場合は、速やかに獣医師の診察を受けることが非常に重要です。
犬にネギは与えてはいけない理由とは
愛犬にネギを食べさせてはいけない理由について、解説します。
ネギに含まれる有機チオ硫酸化物(チオスルフィン酸化合物)による中毒
犬にネギを与えてはいけない理由として、ネギに含まれる有機チオ硫酸化物(チオスルフィン酸化合物)による中毒が挙げられます。
まず、有機チオ硫酸化物(チオスルフィン酸化合物)は、ネギやたまねぎ、にんにくなどのネギ類に含まれている化合物で、犬の体内に取り込まれると、酸素を全身の細胞に運ぶ役割を担っている重要な成分である赤血球の中のヘモグロビンに損傷を与えます。ヘモグロビンを変性させ、メトヘモグロビンという酸素を運搬できない形に変えてしまいます。この結果、赤血球が正常に機能しなくなり、全身の酸素供給が不足する状態が生じます。
さらに、赤血球の膜を破壊する作用も持っています。これにより、赤血球が破壊される「溶血」という現象が起こります。溶血が進行すると、急速に貧血が発生し、犬の体は十分な酸素を供給できなくなります。貧血の症状としては、元気がなくなる、食欲不振、呼吸が速くなる、歯茎や舌が青白くなるなどが見られます。重篤な場合には、黄疸や血尿、さらには命に関わるショック状態に陥ることもあります。
有機チオ硫酸化物による中毒は、少量のネギでも発症する可能性があります。特に小型犬や体重の軽い犬では、少量の摂取でも重篤な症状を引き起こすことがあります。中毒症状は摂取後数時間から数日後に現れることが多く、早期に対応しないと回復が困難になることがあります。
ネギに含まれる硫化アリル(アリシン)による貧血や胃の不調
犬にネギを与えてはいけない理由は、ネギに含まれる硫化アリル(アリシン)と呼ばれる化合物が、犬の健康に重大な影響を与えるためです。硫化アリル(アリシン)は犬の赤血球に対して毒性を持ち、貧血を引き起こす可能性があります。
貧血は、赤血球が破壊されることで起こり、これにより酸素を運ぶ能力が低下します。犬の体は酸素を効率的に運ぶために赤血球を必要としますが、硫化アリル(アリシン)が赤血球を攻撃することで、ヘモグロビンが破壊され、赤血球の数が減少します。この状態を溶血性貧血と呼びます。溶血性貧血になると、犬は疲れやすくなり、元気がなくなり、重篤な場合には黄疸や肝臓の障害が現れることもあります。
さらに、犬の消化器系にも悪影響を及ぼします。犬の胃はネギのような強い刺激物に対して非常に敏感であり、胃の粘膜を刺激して胃炎や胃潰瘍を引き起こすことがあります。これにより、犬は嘔吐や下痢を起こし、食欲不振に陥ることがあります。特に小型犬や老犬、健康状態が優れない犬にとっては、これらの症状が命に関わることもあります。
加熱調理後も有毒成分は消えない
犬にネギを与えてはいけない理由の一つに、加熱調理後も有毒成分が消えないことが挙げられます。ネギには硫化アリル(アリシン)と呼ばれる化合物が含まれており、犬にとって有害な存在です。
まず、硫化アリル(アリシン)は加熱しても完全には分解されません。食品を加熱することで有害成分が分解されることもありますが、硫化アリル(アリシン)は比較的耐熱性が高く、調理後も残存します。したがって、ネギを炒めたり、煮たり、焼いたりしても、有害性は消えないのです。このため、加熱調理後のネギも依然として犬にとって危険です。
加熱しても残る硫化アリル(アリシン)は、犬の赤血球に対して毒性を持ち、溶血性貧血を引き起こす可能性があります。溶血性貧血は、赤血球が破壊されることで起こり、犬の体内で酸素を運ぶ能力が低下します。これにより、犬は倦怠感や息切れ、さらには黄疸などの症状を示すことがあります。重篤な場合には、生命を脅かすこともあります。
ネギが入っている料理や食材は、たとえ少量であっても与えるのはやめましょう。
ネギの部位・状態ごとの危険性
ネギの部位・状態ごとの危険性について、解説します。
ネギの白い部分
犬にとってネギの白い部分は非常に危険であり、絶対に与えてはいけません。
ネギの白い部分には、有機チオ硫酸化物(チオスルフィン酸化合物)と呼ばれる有毒成分が多く含まれています。この成分は、犬の赤血球を破壊することで溶血性貧血を引き起こす可能性があります。溶血性貧血は、赤血球が破壊されることで体内の酸素運搬能力が低下し、犬の体に深刻な影響を及ぼします。
溶血性貧血の症状には、元気がなくなる、食欲不振、嘔吐、下痢、尿の色が変わる(赤茶色や黒色になる)、歯茎や舌が白っぽくなるなどがあります。これらの症状は、ネギを摂取した後数時間から数日以内に現れることがあります。特に大量に摂取した場合や、体重の軽い小型犬や老犬、子犬は、症状が重篤になる可能性が高くなります。
ネギの青い部分
犬にとってネギの青い部分も非常に危険であり、絶対に与えてはいけません。ネギの青い部分には、白い部分と同様に有機チオ硫酸化物(チオスルフィン酸化合物)が含まれています。
ネギの根
犬にとってネギの根も非常に危険であり、絶対に与えてはいけません。ネギの根にも、有機チオ硫酸化物(チオスルフィン酸化合物)が含まれています。有機チオ硫酸化物が犬の体内に入ると、赤血球の膜を破壊し、赤血球が正常に機能できなくなるため、溶血性貧血を引き起こします。
加熱調理後のネギ
加熱することでネギの一部の有毒な成分濃度は低下する可能性がありますが、完全には消失しません。特にアリシンなどの有害成分は加熱しても分解されないことが多く、犬に与えると健康問題を引き起こす可能背があります。したがって、加熱したネギも愛犬に与えないようにしましょう。
犬にとってのネギの危険な量
犬にとってネギの危険な量については、犬の体重や健康状態、個体差によって影響が異なるため、具体的な量を断定することは難しいものの、一般的には犬の体重1kgあたり15〜30g以上危険とされています。ただし、これらの数字はあくまで目安であり、犬の体質によってはもっと少量で健康問題を引き起こすことがあります。
また、上記以下の少量のネギでも長期間摂取し続けると、毒素が蓄積して慢性的な健康問題を引き起こすことがあるため、基本的には、ネギを与えないことおすすめします。
犬がネギを食べてしまった場合に現れる症状
犬がネギを食べてしまった場合に現れる症状について、解説します。
貧血
犬がネギを摂取すると、その成分が赤血球を破壊し、溶血性貧血を引き起こすことがあります。溶血性貧血の症状としては、元気がなくなる、活動的でなくなる、食欲が落ちる、といった変化が見られます。重度の場合、犬が意識を失うこともあります。
黄疸
赤血球が大量に破壊されると、体内のビリルビン値が上昇し、皮膚や粘膜、眼の白い部分が黄色くなる黄疸が現れることがあります。これは肝臓への負担も示唆しています。
血尿
溶血性貧血が進行すると、犬の尿が赤っぽくなったり、茶色がかったりすることがあります。これは赤血球が破壊されてヘモグロビンが尿に排出されていることを示唆しています。
胃腸・消化器系の症状
ネギは犬の胃腸に刺激を与え、嘔吐や下痢を引き起こすことがあります。これには、食欲不振や腹部の痛みが伴うこともあります。
呼吸困難
犬がネギを大量に摂取した場合、呼吸が速くなったり、浅くなったりすることがあります。これは犬の体内の酸素が不足していることを示しています。
神経系の症状
犬がネギを摂取した場合、運動調整能力の喪失やけいれんを示すことがあります。また、異常な行動や反応の鈍化など、神経系に影響が出ることがあります。
犬がネギを食べてしまった場合の対処法
飼い主さんが対応すること
ネギを食べてしまった場合は、まず、かかりつけの獣医さんに相談しましょう。間違っても、飼い主自らが無理矢理吐き出させるようなことはしてはいけません。獣医さんでも慎重に行う処置なので、飼い主さんが行うのはやめておきましょう。
診てもらう際には、いつ、どのくらい食べたか、水を飲んだか、どんな症状が見られたかなどをメモして獣医さんに伝えましょう。そうすることで、現状把握がしやすく、スムーズに診察・治療が進められます。
病院での治療法
対症療法として、ビタミン剤、強心剤、利尿剤などを投与し、催吐や胃洗浄などが行われます。摂取したのが60分以内で、臨床症状が出ていない場合は催吐し、摂取したのが2〜4時間以内であれば胃洗浄を行ったり、塩類下剤の投与をしたりすることもあります。貧血が起きている場合は輸血をすることもあります。
参照:大島誠之助、左向敏紀(2011). 禁忌食(その1)――タマネギなどのネギ属とイヌ・ネコの健康 ペット栄養学会誌, 14(2), 103-104
犬がネギを誤って食べてしまうのを防ぐには?
まず第一に、愛犬が口にできたり、ネギの存在を確認できたりするような場所に保管するのはやめましょう。また、人が食べた後の残しや、処理した種や皮に愛犬が近寄れないようにする必要があります。
さらに、拾い食いなどをしないように躾けるということも考えられます。
犬とネギについてよくある質問
- 犬が少量のネギを食べてしまった場合、どのような対応をすべきですか?
-
犬がネギを食べてしまった場合、獣医師に相談することをおすすめします。犬によっては少量であっても重篤な健康問題を引き起こす可能性があります。受診する際には、犬が食べたネギの量や犬の体重、健康状態などを伝えるようにしましょう。
- 犬にネギが含まれている食品を与えても大丈夫ですか?
-
犬に、ネギが含まれている食品は与えないようにしましょう。ネギには犬にとって有毒な成分が含まれています。
- 犬がネギを食べるとどのような症状が現れますか?
-
犬がネギを食べた場合、溶血性貧血の症状として、元気がなくなったり、活動量が減少したり、食欲不振を示したりすることがあります。また、浅い呼吸や、黄疸、尿の色が赤や茶色になる、嘔吐や下痢などの消化器系の問題も見られることがあります。
まとめ
ネギは、犬にとって有機チオ硫酸化合物(チオスルフィン酸化合物)という有毒な成分が含まれているため、与えてはいけません。
また、ニラ、ニンニクなどのネギ類も同様の症状を引き起こします。人のごはんをつくる調理時や調理後、保管場所には注意しましょう。