結論、にんにくは犬に与えてはいけない食材です。有機チオ硫酸化物(チオスルフィン酸化合物)という犬にとって有害な成分が含まれています。犬がにんにくを食べると、この成分が原因で貧血や急性腎不全を発症し、致死量は犬の体重1 Kg当たり約10g~30gと考えられています。本記事では、与えてはいけない理由や食べてしまったときの対処法を解説します。
犬ににんにくは与えてはいけない!
にんにくには、犬にとって有毒な有機チオ硫酸化物(チオスルフィン酸化合物)が含まれており、中毒症状を引き起こしてしまうため、愛犬に与えないようにしましょう。加熱など加工調理を行っても、この成分は消失しないため、注意してください。
有機チオ硫酸化物(チオスルフィン酸化合物)が、犬の赤血球を傷つけ、溶血性貧血を引き起こす原因となります。赤血球は体全体に酸素を運ぶ重要な役割を果たしていますが、有機チオ硫酸化物(チオスルフィン酸化合物)は犬の体内で赤血球の細胞膜を損傷し、赤血球を破壊しやすくしてしまいます。この状態を溶血性貧血と呼び、進行すると、犬の体は新たな赤血球を十分に補充できず、重い貧血状態に陥ることになります。
症状としては、元気がなくなり、食欲が低下し、嘔吐や下痢、呼吸が速くなる(過呼吸)、心拍数の増加などが見られるようになります。さらに進行すると、皮膚や粘膜が黄色くなる黄疸や、尿が赤色や茶色になるといった兆候が見られることもあります。これらは、犬がにんにくを摂取してから、早ければ1~2時間で初期症状が現れ、本格的な症状は消化後の1~2日に症状が現れるとされています。
にんにくの中毒量は犬の体重などによりますが、一般的に、体重1kgあたり15〜30gのにんにくが危険とされています。また、にんにく以外にも、ネギ類である、たまねぎ、にら、長ねぎ、わけぎ、でも同様の症状が現れます。
これらのことを踏まえる、愛犬ににんにくを与えないようにしましょう。
犬ににんにくは与えてはいけない理由とは
愛犬ににんにくを食べさせてはいけない理由について、解説します。
有機チオ硫酸化物(チオスルフィン酸化合物)による中毒
にんにくには、犬にとって有毒な有機チオ硫酸化物(チオスルフィン酸化合物)が含まれています。この成分は赤血球をは壊してしまう作用を有しています。
具体的には、有機チオ硫酸化物は犬の体内で、赤血球の細胞膜にあるヘモグロビンを酸化させてメトヘモグロビンに変換します。メトヘモグロビンは酸素を運ぶ機能を持たないため、赤血球全体の酸素運搬能力が低下します。さらに、赤血球の細胞膜自体も傷つけるため、赤血球が破壊されやすくなり、結果的に溶血性貧血を引き起こします。
溶血性貧血は、赤血球が破壊されることで酸素を十分に運ぶことができなくなる状態になるため、元気がなくなり、食欲が低下し、嘔吐や下痢、過呼吸、心拍数の増加といった症状が現れます。症状が進行すると、皮膚や粘膜が黄色くなる黄疸や、尿が赤色や茶色になる血色素尿といった症状も現れます。また、重度の貧血を引き起こす可能性もあります。
硫化アリル(アリシン)による貧血や胃の不調
硫化アリル(アリシン)は、にんにくが物理的に傷つけられたとき(例えば切ったり潰したり)に、アリインという成分から生まれます。この硫化アリル(アリシン)は強力な抗菌・抗ウイルス効果を持つため、人間の健康には多くの利点がありますが、犬にとっては有毒な成分です。
まず、犬の体内では、アリシンが赤血球のヘモグロビンと反応して赤血球を破壊することがあり、溶血性貧血を発症するリスクが高まります。
また、胃などの消化器官に対して刺激を与え、胃の不調を引き起こすことがあります。具体的には、にんにくを摂取した犬が嘔吐や下痢、食欲不振といった消化器系の症状を示すことがあります。これは硫化アリル(アリシン)が胃の粘膜を刺激し、炎症を引き起こすためです。さらに、アリシンはアレルギー反応を引き起こしたり、長期間にわたって小量のにんにくが摂取された場合、肝臓や腎臓への影響も考えられるため、愛犬には与えないようにしましょう。
加熱調理後も有毒成分は消えない
にんにくに含まれるアリインは、にんにくがすりおろされたり、切られたりするなどして細胞が破壊されると、酵素の働きで硫化アリル(アリシン)に変化します。そして、硫化アリル(アリシン)がさらに分解される過程で、犬にとって有害な有機チオ硫酸化合物(チオスルフィン酸化合物)などの化合物をになります。これらの化合物は、赤血球の細胞膜を損傷させたり、ヘモグロビンを酸化させてメトヘモグロビンという酸素を運べない状態に変換したりするため、赤血球が正常に機能させることを阻害する働きがあります。
これらは加熱や調理を行っても、消えることなく残り続けます。例えば、生のにんにくを加熱調理することで、硫化アリル(アリシン)自体は分解されるものの、分解された後の有機チオ硫酸化合物(チオスルフィン酸化合物)は依然として残り、有毒性を持ち続けます。同様に、にんにくを乾燥させて粉末状にしたものや、にんにくエキス、にんにくオイルといった加工品にも含まれています。
また、にんにくが含まれる食品や料理の中でも有毒成分は残っているため、人間の食事に含まれるにんにくが犬の口に入らないように注意する必要があります。例えば、ガーリック風味のパンやパスタソース、スープ、カレーなどには、調理されたにんにくの成分が含まれていることが多く、犬が誤って食べてしまうと健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
にんにくの部位・状態ごとの危険性
にんにくの部位・状態ごとの危険性について、解説します。
生のにんにく/にんにくの実
にんにくの実にはアリインという成分が含まれており、これが損傷を受けると有機チオ硫酸化物(チオスルフィン酸化合物)や硫化アリル(アリシン)に変化します。これらの成分は、溶血性貧血や消化器系への悪影響をもたらす可能性が高いため、愛犬には与えないようにしましょう。
にんにくの皮
にんにくの皮自体には、直接的な毒性は含まれていないと考えられますが、皮をむく過程で実から出る成分には有害な成分が含まれています。また、皮自体が消化されにくい性質であり、犬が誤って大量に摂取すると消化不良や腸閉塞の原因となる場合があります。
加熱調理後のにんにく
加熱することでにんにくの一部の有有毒な成分濃度は低下する可能性がありますが、完全には消失しません。特にアリシンなどの有害成分は加熱しても分解されないことが多く、犬に与えると健康問題を引き起こす可能背があります。したがって、加熱したにんにくも愛犬に与えないようにしましょう。
粉末にしたにんにく
粉末にしたにんにくも、生のにんにくと同様の成分が含まれているため、犬にとって有毒な成分を有しており、愛犬に与えないことが推奨されます。
犬にとってのにんにくの危険な量
犬にとってにんにくの危険な量については、犬の体重や健康状態、個体差によって影響が異なるため、具体的な量を断定することは難しいものの、一般的には犬の体重1kgあたり15〜30g以上危険とされています。ただし、これらの数字はあくまで目安であり、犬の体質によってはもっと少量で健康問題を引き起こすことがあります。
また、上記以下の少量のにんにくでも長期間摂取し続けると、毒素が蓄積して慢性的な健康問題を引き起こすことがあるため、基本的には、にんにくを与えないことおすすめします。
犬がにんにくを食べてしまった場合に現れる症状
犬がにんにくを食べてしまった場合に現れる症状について、解説します。
貧血
犬がにんにくを摂取すると、その成分が赤血球を破壊し、溶血性貧血を引き起こすことがあります。溶血性貧血の症状としては、元気がなくなる、活動的でなくなる、食欲が落ちる、といった変化が見られます。重度の場合、犬が意識を失うこともあります。
黄疸
赤血球が大量に破壊されると、体内のビリルビン値が上昇し、皮膚や粘膜、眼の白い部分が黄色くなる黄疸が現れることがあります。これは肝臓への負担も示唆しています。
血尿
溶血性貧血が進行すると、犬の尿が赤っぽくなったり、茶色がかったりすることがあります。これは赤血球が破壊されてヘモグロビンが尿に排出されていることを示唆しています。
胃腸・消化器系の症状
にんにくは犬の胃腸に刺激を与え、嘔吐や下痢を引き起こすことがあります。これには、食欲不振や腹部の痛みが伴うこともあります。
呼吸困難
犬がにんにくを大量に摂取した場合、呼吸が速くなったり、浅くなったりすることがあります。これは犬の体内の酸素が不足していることを示しています。
神経系の症状
犬がにんにくを摂取した場合、運動調整能力の喪失やけいれんを示すことがあります。また、異常な行動や反応の鈍化など、神経系に影響が出ることがあります。
犬がにんにくを食べてしまった場合の対処法
飼い主さんが対応すること
にんにくを食べてしまった場合は、まず、かかりつけの獣医さんに相談しましょう。間違っても、飼い主自らが無理矢理吐き出させるようなことはしてはいけません。獣医さんでも慎重に行う処置なので、飼い主さんが行うのはやめておきましょう。
診てもらう際には、いつ、どのくらい食べたか、水を飲んだか、どんな症状が見られたかなどをメモして獣医さんに伝えましょう。そうすることで、現状把握がしやすく、スムーズに診察・治療が進められます。
病院での治療法
対症療法として、ビタミン剤、強心剤、利尿剤などを投与し、催吐や胃洗浄などが行われます。摂取したのが60分以内で、臨床症状が出ていない場合は催吐し、摂取したのが2〜4時間以内であれば胃洗浄を行ったり、塩類下剤の投与をしたりすることもあります。貧血が起きている場合は輸血をすることもあります。
参照:大島誠之助、左向敏紀(2011). 禁忌食(その1)――タマネギなどのネギ属とイヌ・ネコの健康 ペット栄養学会誌, 14(2), 103-104
犬がにんにくを誤って食べてしまうのを防ぐには?
まず第一に、愛犬が口にできたり、にんにくの存在を確認できたりするような場所に保管するのはやめましょう。また、人が食べた後の残しや、処理した種や皮に愛犬が近寄れないようにする必要があります。
さらに、拾い食いなどをしないように躾けるということも考えられます。
犬とにんにくについてよくある質問
- 犬が少量のにんにくを食べてしまった場合、どのような対応をすべきですか?
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犬がにんにくを食べてしまった場合、獣医師に相談することをおすすめします。犬によっては少量であっても重篤な健康問題を引き起こす可能性があります。受診する際には、犬が食べたにんにくの量や犬の体重、健康状態などを伝えるようにしましょう。
- 犬ににんにくが含まれている食品を与えても大丈夫ですか?
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犬に、にんにくが含まれている食品は与えないようにしましょう。にんにくには犬にとって有毒な成分が含まれています。
- 犬がにんにくを食べるとどのような症状が現れますか?
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犬がにんにくを食べた場合、溶血性貧血の症状として、元気がなくなったり、活動量が減少したり、食欲不振を示したりすることがあります。また、浅い呼吸や、黄疸、尿の色が赤や茶色になる、嘔吐や下痢などの消化器系の問題も見られることがあります。
まとめ
にんにくは、犬にとって有機チオ硫酸化合物(チオスルフィン酸化合物)という有毒な成分が含まれているため、与えてはいけません。
また、たまねぎ、長ねぎ、あさつき、わけぎ、ニラなどのネギ類も同様の症状を引き起こします。人のごはんをつくる調理時や調理後、保管場所には注意しましょう。