卵は、犬に与えても大丈夫な食材です。卵には、必須アミノ酸や、ビタミン、ミネラル、脂肪などが含まれているため、犬にとっても栄養価の高い食材といえます。しかし、与える分量や与え方には注意が必要です。本記事では、卵が犬にもたらす栄養や効果、与える際の注意点などを解説します。
犬に卵を与えても大丈夫?
結論、卵は犬の体に有毒な成分は含まれておらず、与えても大丈夫な食材です。卵は、アミノ酸スコアが100を示しており、完全栄養食といわれるほど、栄養素が豊富に含まれています。
しかし、卵にはさまざまな調理法が存在し、代表的な食べ方としては目玉焼きやゆで卵、生卵などがあります。与え方や与える量に注意が必要な部分もあるため、本記事でご紹介していきます。
犬に与えてよい卵の部分や状態は?
卵には、白身や黄身、殻といった部分があります。また、生卵や加熱した卵といった状態の違いもあります。これらについて、与えてもよいか、避けた方がよいか解説をします。
白身
白身には、アビジンという成分と、ビタミンB(ビオチン)が含まれています。アビジンはビオチンの吸収を妨げると考えられており、必要な要素であるビオチンの吸収を妨げないようにするためには、白身は与えるとしても加熱し、少量にした方がよいでしょう。
黄身
黄身には、ビタミンB(ビオチン)は豊富に含まれています。生でも食べられますが、生卵は細菌が繁殖しやすく、消化器系の体調不良につながる可能性があるため、加熱をして与えることをおすすめします。
殻
殻には、カルシウムが含まれていますが、殻は硬く、細かく砕いても鋭い箇所が残っているため、口腔内や消化器系に負担をかけるおそれがあります。そのため、殻を与えることはおすすめしません。もし、与えたいという場合は、粉状にして与えるとよいでしょう。
生卵
生の白身には、ビタミンB(ビオチン)の吸収を邪魔するアビジンが含まれています。また、生の卵は細菌繁殖がしやすく、食中毒や消化器系の体調不良につながる可能性があるため、そのまま与えることはおすすめできません。なるべく加熱しましょう。
加熱した卵
加熱した卵は、問題なく安心して与えることができます。ただ、加熱し過ぎると、蛋白質が壊れる可能性もあるため、たんぱく質の摂取を重要視する場合は加熱方法を工夫する必要があります。
卵が犬にもたらす栄養素と効果
卵には犬の健康維持に役立つ栄養が豊富に含まれています。代表的な栄養素とその効果について説明します。
たんぱく質
卵には、たんぱくが豊富に含まれており、たんぱく質は犬の体内でアミノ酸に分解されます。アミノ酸は、筋肉や皮膚、ホルモン、抗体などを作るのに役立ち、愛犬の健康維持に大きく貢献します。約20種類ほどのアミノ酸が犬の体内で働いており、その多くは犬の体内で合成されます。ただ、食べ物から摂取しなくてはならないアミノ酸も存在し、必須アミノ酸として10種類あります。卵には、この必須アミノ酸10種類が網羅されています。
しかし、腎臓疾患などを持っている場合はたんぱく質を制限する必要があるため、獣医さんへ相談するなどしておくと安心でしょう。
ビタミンA(βカロテン)
βカロテンは、犬の体内でビタミンAに変換される栄養素です。ビタミンAは、皮膚や被毛の健康状態を保ち、丈夫な粘膜や歯をつくる働きがあります。また、βカロテンはビタミンAとして働くだけではなく、強い抗酸化作用もあるため、アンチエイジングや免疫力向上にも寄与します。
ビタミンB
卵にはビタミンB群(B1、B2、B6、B7、B12)が含まれており、特に多く含まれているがビオチン(ビタミンB7)です。ビオチン(ビタミンB7)には、消化や代謝を助ける補酵素の効果があり、犬の粘膜や皮膚、神経を正常に保つ働きをします。
ビタミンB1、B2、B6は、皮膚や被毛、粘膜を健康な状態に保つ働きをすると考えられています。ビタミンB1が不足すると、皮膚トラブルや毛艶が悪くなったりします。ビタミンB2が不足すると、皮膚や被毛の乾燥につながるおそれがあります。ビタミンB6が不足すると、皮膚や神経、血液の異常を引き起こす可能性があります。
ビタミンB12は、タンパク質の合成や赤血球の合成に貢献します。
ビタミンⅮ
ビタミンDは、カルシウムやリンの吸収をサポートしたり、体内のカルシウムを調整するしたりする働きがあります。また、犬の丈夫な骨や歯を維持するのに欠かせない要素でもあります。
ビタミンK
ビタミンKは、骨を形成したり丈夫にしたりする働きや、出血があった際に血を止める凝血作用があります。あるも多く含まれています。
犬は自分の腸内でビタミンKを合成することができますが、消化器の状態などにより生成力が低下している可能性がある場合は、卵などの食物やサプリメントで補うとよいでしょう。
カルシウム
カルシウムは、筋肉の収縮や弛緩(筋肉をスムーズに動かす)や、骨・歯の構成要素として必要な栄養素です。また、神経細胞の興奮と伝達を調節して神経の正常機能維持する働きもあり、不足するとイライラしたり神経過敏につながる可能性があります。卵の黄身と殻に、カルシウムが多く含まれています。
鉄分
鉄分は、赤血球による血液中の酸素運搬に欠かせない役割を果たします。また、ヘモグロビンを構成する要素でもあります。
他にも、赤血球だけでなく、筋肉中のミオグロビンを構成する要素でもあり、赤血球や筋肉への酸素の取り込みに大きく貢献しています。
脂質
脂質は、糖分やたんぱく質と同じようにエネルギー源になる役割があります。また、ビタミンの吸収をサポートする働きもあると考えられており、愛犬の健康維持・改善に大切な要素といえるでしょう。
犬に卵を与える際の適量
犬に卵を与える場合は、体重に合わせて以下の量を参考にしてください。あくまでもカロリー上の算出値であるため、主食を阻害しない量にしましょう。
犬の体重目安 | 1日あたりの摂取可能目安 |
小型(2~5kg) | 13g~26g |
中型(6~15kg) | 30g~60g |
大型(20~50kg) | 75g~148g |
犬に卵を与える際の注意点
卵は、犬にも人間にも健康的な食品で、非常に多くの栄養素を含んでいます。しかし、卵を与える際にはいくつかの注意点があるので、ご紹介します。
与えてよい卵の部位・状態
卵は、黄身、白身、殻どの部分も与えても大丈夫です。しかし、殻に関しては、粉末上にするなど工夫しないと、犬の消化器系を傷つける恐れがあります。また、生卵は細菌繁殖がしやすいため、食中毒や消化器系の体調不良につながることもあるので、なるべく加熱しましょう。
卵アレルギー
アレルギーは、体内の免疫機能がたんぱく質に対して異常に反応することで引き起こされる症状です。卵にはたんぱく質が含まれているため、アレルギーを引き起こすおそれがあります。特に鶏肉アレルギーがある犬は、卵に対してもアレルギー反応を引き起こす可能性があります。
卵アレルギーがあるかわからない場合は、まず少し与えてみて、下痢や嘔吐、皮膚を痒がる、元気がなくなるなどのアレルギー症状が出ないかどうか確認してください。症状が現れた際には、速やかにかかりつけの獣医さんに診てもらいましょう。
サルモネラ菌・大腸菌などによる食中毒
市販されている卵は、洗浄されているので、食中毒の可能性は高くありません。しかし、高温多湿の環境に長時間保管されていたり、扱う人の衛生状態によってサルモネラ菌に汚染されていたり、殻に大腸菌が付着していたりする場合もあります。そのため、卵は加熱してから与えたほうが安心でしょう。
アビシンの多量摂取による皮膚炎や成長不良
卵の卵白に含まれるたんぱく質の一種にアビシンという成分があり、多量摂取すると愛犬の皮膚炎や成長不良につながる可能性があります。白身部分により多く含まれているため、生卵の場合は黄身だけ与えるようにしましょう。白身も与える場合は、アビシンは熱には弱いので、加熱してから与えることをおすすめします。
高カロリーなので摂取量には注意
卵のカロリーは、100g当たり142キロカロリーほどあり、高カロリーな食材です。したがって、与えすぎると肥満や疾患につながる可能性もあるため、主食のドッグフードの量を鑑みつつ、上述した適量を守りましょう。
加工品は与えない!
卵は、さまざまな栄養が含まれており、脂質もその一つです。加工品は、卵単品の栄養に加えて、脂質や糖質がさらに増えてしまいます。ただし、犬用のお菓子であれば、カロリー計算されているため神経質になる必要はありません。
まとめ
卵は、栄養価の高い食材で基本的には犬に与えても問題ありません。ただし、殻を与える際や生卵を与える際には注意点があるので、本記事を参考にしてみてください。
また、アレルギー反応を示す場合もあるので、初めて与える際には少量にして様子を見つつ、アレルギー反応が出たら、速やかにかかりつけの獣医さんに相談しましょう。